暇つぶし

3年生になってからというもの、不規則的に土曜日に登校して課外授業がある。もちろん、そんなにガリガリ勉強してレベルの高い大学に行く気もないので、ただの退屈な時間となっているわけです。
そこで、ボクの「時間よ早く進め」の発動です。そう、先生の話が聞こえなくなるくらい集中して妄想するんです。今日は、クラスで文化祭用の短編映画を作るという話を妄想。

とりあえず、ボクが監督を務めることになった。一度やってみたかったから嬉しかった。次に、どんな映画を撮るかをボク司会でクラス全員で話し合った。結局、消極的な男性陣からの意見は出ずに女性陣からの意見「恋愛」が強行採決された。
次に適当にカメラマンやら大道具係などを決めた。脚本とかは女性陣におおまかをまかせて、ボクが最終チェックする形をとった。しかし、順調だったのはここまでで、やはり配役が決まらない。演劇部のエースでもいれば一発で主役は決まるのだが……。とりあえず、男性側の主役はボクの一方的な権限でSくんに決定した。そうなると、Sくんも乗り気になった。
Sくんを選んだ理由。それは単にクラスで1番カッコイイからだ。じゃないと、ヒロインも決まりやしないだろうと思ったからだ。しかし、予想に反してヒロインは決まらない。監督としての責任を感じたボクは女性陣だけを集めて言った「Sのこと好きな人いないの?」。ざわめきが起こり、一人の女子がみんなから指差されていた。「コレを期にさっ、ね?」ボクがドンドン推すのに呼応して、他の女子も彼女を持ち上げた。「じゃあ」その一言でヒロインが決まった。
話の内容は、女の子がクラスの男に片思いするというものにした。現実での二人の関係にピッタリで、演技も自然とそれなりになるだろうと考えたからだ。このように話のおおまかな流れは決まったが、脚本がうまくいかなかった。女子に大半をまかせたばかりに、どうも女性目線で話が進み過ぎているような気がした。
そこでボクは、各シーンごとに二つの台本を作るように指示した。全体でではなく、各シーンごとに二つの台本を作るのだ。それは、撮影をするうちに現実での二人はドンドン接近して行くだろうと考えたからだ。最初に全部の流れを決めてしまったら、リアリティー重視のリアル無視になってしまう。リアルで刻々と変わる心情を、リアリティーでも生かそうというものだった。
いざ撮影。シーンごとに二人に二通りあるうちのどちらの台本がいいかを毎回聞いた。そして撮影は、無事に女の子の告白が成功するという形で終わった。
しかし、Sくん以外には内緒にしておいたシーンが一つだけあった。それはリアルでの告白だ。撮影終了後の打ち上げのときに、主役二人だけの状況を作り女の子から本当の告白をするというものだ。脚本を書いているときに女子たちから出た意見を鵜呑みにした格好だが、ボクは告白が成功したら、それを映画のラストにしようと企んでいた。リアルな告白の方が迫力があると思ったからだ。
ボクたちは、うまく二人きりにすることに成功した。ボクは物陰からカメラを構えて一部始終を見ていた。女の子が告白した。Sが笑う。二人が笑う。それを見ていた女子たちが二人に駆け寄った。全てがカメラに収められた、最高のエンディングだった。
文化祭当日、ボクはリアルはリアルにしておくことにした。

んで、授業が終わって気づいたんだよねぇー。他人の幸せに手を出すほど、ボクは幸せじゃない!ってことね。なので、この後に脚本を一緒に書いてた女の子とボクが付き合います。